シルクのお手入れ

お手入れ

こんにちは。ichiru のササキタクマです。

今回はシルクのお手入れについて書いていきます。

シルクと聞いて反射的に想像するのは、品のある素材の質感がまとうエレガントな雰囲気ではないでしょうか。

そして、いざシルクオーナーになろうとした時に立ち塞がる壁のような気持ち、それは、お手入れの難しさからくるめんどくささではないでしょうか。

結論から言いましょう。
洗濯方法は、手洗い or クリーニングです。

キャッチーに「洗濯機で丸洗い!」などと言って皆さんの関心を惹きつけてバズりたいのですが、気持ちを抑えてちゃんと言うことに成功しました。

洗濯機で洗うこともできるのですが、おすすめはできません。

じゃあどうするの、と思ったあなたの為にこの記事を書いております。

シルク素材がどういった特徴を持っているのかを知らないから怖いのです。

少しだけでも理解すれば、洗濯や管理など、怖くありません。

いや、ちょっと面倒なことには変わりありませんけれども。

でも、手がかかるということを、魅力のひとつだと思い込んでみようではありませんか。

シルク素材の特徴

まず、「知ってるようで知らなかったシルクの特徴」を覚えちゃいましょう。

まずは good ポイントから解説していきます。

シルク素材 good ポイント

  1. 光沢
  2. 柔らかさと滑らかさ
  3. 吸湿性・放湿性・保温性
  4. 静電気耐性
  5. 紫外線防御

1: 光沢

シルクは、天然素材で唯一のフィラメント繊維と言われています。

簡単に言うと、光の反射で美しい光沢がうまれるという事です。

繊維の表面にほとんど凹凸がないので、光を均一に反射します。それが美しい光沢と、滑らかな質感の正体であります。

2: 柔らかさと滑らかさ

シルクがなぜ滑らかで柔らかいのかを説明しようとすると、大変なことになります。

私ではなく、皆さんが、です。

説明するにあたって、フィブロインの結晶構造、アモルファス領域、セリシン、水素結合のことを話さなければいけません。

こんな話、きっと目を開けて聞いていられません。

できるだけ簡単にまとめていきます。

人の肌はタンパク質です。シルクも天然のタンパク質 (フィブロイン) でできています。タンパク質が潤滑剤 (セリシン)のように機能して摩擦を減らして、滑らかな感触を感じられています。

同じタンパク質のため、人肌との相性が良く、肌に優しいです。他の素材ではかぶれてしまったりする人にもお勧めしやすい素材です。

さらに繊維の細さと密度の低さが、柔らかさをうみだしています。

ちょっと難しいですね。

細い繊維は柔軟に曲がることができるため、肌に対して柔らかく感じられます。

繊維密度が低いと空気を多く含むため、軽量でしなやか、という良いことフィーバー状態となっています。

まとめると、人肌と相性が良いので滑らかで、空気が多く含まれるから柔らかく感じられるんだなぁ、ということです。

柔らかく滑らかな素材感から、シルク特有の美しいドレープのシルエットがうまれています。

3: 高い吸湿性・放湿性・保温性

吸湿性が高いという表現は、あまり聞きなれないものだと思います。吸水と吸湿なんて、同じような感じがしてしまいますね。

吸水は、液体である水を吸い込む力の事です。
吸湿は、空気中の水分である水蒸気を吸い込む力の事です。

シルクは吸湿性が高いので蒸れにくい、そして、放湿もしてくれるので、ずっと快適にさらさらを保ってくれるという事です。

この辺の話は化学的でややこしくなりますので、「そうなんだ」と簡単に分かっていれば大丈夫です。

前述しましたが、シルクは空気を多く含む素材でもあります。層に隙間があるというイメージです。

この層が断熱の役割をしてくれるため、保温性が高くなるようです。

保湿性が高いということも、肌へのさらさらに一役かっているようです。

4: 静電気耐性

私は静電気が大嫌いで、最悪の敵だと考えています。

先ほど、吸湿・放湿を「うんうん」と理解した皆さまならもうお分かりですね。

放湿されているとはいえ、吸湿されているので、繊維の保水量は高くなります。

シルクは自重の約30%の水分を吸収することができるそうです。その水分の潤いで乾燥を避けて、静電気が起こりにくい、という事です。

静電気が起こりにくいということは、それが原因で引き寄せる、ホコリや花粉などが付きにくいという効果もあります。

5: 紫外線防御

シルクがかいこまゆを原料としているのはご存知のことでしょう。繭の中にいる蚕、紫外線を浴びると成長が妨げられてしまうそうです。

その為、繭は紫外線を吸収する性質があるようです。蚕すごっ。

それがシルクという繊維になると、約90%もの紫外線をカットしてくれるとも言われています。

このカット率なら、首に巻けばしっかり日焼け防止にもなりますね。

真知子巻きは顔の日焼けをガードしていたのかもしれません。白黒だったから日差しの強さが分かりませんでしたが、きっといい天気だったのでしょう。

以上が good ポイントです。
続いて bad ポイントを解説していきます。

シルク素材 bad ポイント

  1. 水に弱い
  2. 摩擦に弱い
  3. 紫外線に弱い

1: 水に弱い

吸湿性と放湿性が高いのに水に弱いのか、と思ってしまいましたね?

これは先ほどの解説にも出てきた、液体と蒸気の違いとなります。

簡単に言うと、短時間の少量の湿気には強いが長時間の多量の水分には弱い、ということです。
もう少し解説していきます。

先ほども出てきたセリシンという表面を覆うタンパク質は、水に溶けやすい性質を持っています。
滑らかさをうみだす潤滑剤のような役割を果たしているセリシンは、吸湿性と放湿性の機能の大半を担ってもいます。

セリシン、すごい能力者。

難しいことを言い出すと化学結合や分子構造の事にまで触れなければいけなくなってしまいます。

吸湿・放湿能力は、適度に湿度を保たれた環境でしか発揮しません。水分量や水に触れている時間を調節できない洗濯機でのお手入れには不向きという事になります。

2: 摩擦に弱い

セリシンが、また関わってきます。

セリシンの潤滑機能で摩擦を減らし、滑らかさをうみだしていると、何度も書きました。そして、繊維の細さと密度の細さが柔らかさをうみだしているとも書きました。

その両方が摩擦に弱い理由です。
皆様からの失笑が、手に取るように感じられますが、解説いたしょう。

感覚的にはわかる話ですよね。
滑らかさ、細さ、柔らかさという特性を持った中で過剰に摩擦が加わると、なんか弱そう。

その位にシンプルな話なのですが、化学の言葉が話をややこしくしてしまいます。

滑らかであるため摩擦抵抗が少なくなり繊維間で摩擦が発生しやすくなるとか、何言ってるか分かりません

3: 紫外線に弱い

シルク素材は約90%もの紫外線をカットする、そう書きました。しかし、紫外線に弱いのです。

入り組んでいますが、めげずに解説したいと思います。

これも感覚的に言ってしまえば、吸収に優れている事と強いという事は違う、と理解できます。

他の繊維素材も、もれなく紫外線には弱いです。
人にも良くないですし、メリットに働くはずもありません。

人にも良くないという事は、やっぱりタンパク質が関係してきます。UV光は、タンパク質を分解して、破壊します。

怖っ。

UV光は、色素も破壊します。染まりやす特性を持っているため、色鮮やかな表現をイメージしやすいシルク製品ですが、反面、UV光にも特に弱いという事になってしまいます。

素材のことだけを考えると、真知子巻きのし過ぎには注意が必要ですね。

以上、 bad ポイントの解説でした。

シルクの洗い方

お待たせしました。本題でございます。

素材の特性についてはざっくりと理解できていれば大丈夫です。

全てを覚えてなくても、知らなかった状態より何かしらのフックができているはずです。

少し、シルクに対しての怖さや難しさ、面倒くさい気持ちなどが和らいでいることを願って、洗い方の解説にいきたいと思います。

洗濯をする手順はこちら。

  1. 洗剤投入
  2. 洗う
  3. すすぐ
  4. 脱水
  5. 干す
  6. アイロン

順番に見ていきましょう。

1: 洗剤投入

ここまで読み進めてくれたのなら、もうお分かりの事だと思いますが、改めて前提を書いておきます。

洗濯機で洗えないこともないけれど、慣れていないととてもリスクが高いという事を忘れてはいけません。

洗濯は、手洗いを基本とします。

おけに、30°c 以下のぬるま湯を入れましょう。水よりも洗浄力が高まります。熱すぎてしまうと生地が傷むと共に、色が落ちやすくなります。

水でも大丈夫ですが、ぬるま湯で洗浄力が高まるということは、効率よく汚れを落として水に触れている時間が減らすことができます。

洗濯している時間を10分以内にすることが、生地を傷めずに洗う大切なポイントです。

でも、物によっては色がよく落ちてしまう場合がありますので、端を少しつけてみて大丈夫そうでしたらぬるま湯で、色が落ちそうでしたら水にしましょう。

水・ぬるま湯の違いと注意点は以上です。

ichiru では大きめのホーローおけを使っていますが、洗濯物が収まる大きさの物であればなんでも構いません。

洗濯物を入れてこぼれないラインまでたっぷり湯をはります。ここで、中性洗剤を投入します。

多くの洗濯用洗剤は、アルカリ性か弱アルカリ性です。ここでは詳しい説明を避けますが、主にタンパク質を落とすようなものだと思ってください。

そう、シルク素材のかなめであるタンパク質を落としてしまいます。だから中性洗剤を使っていきます。

食器用洗剤も中性です。厳密にいえば成分が違いますので代替として使うことはお勧めできません。

衣類用の中性洗剤であればなんでも構いませんが、ichiru でお勧めしているものは2つあります。

『ファーファ フリー& 香りのない洗剤』と

『海をまもる洗剤 (無香)』です。

もちろんこれ以外の洗剤でも、全く問題ありません。使っているものがあれば、そのままご使用してください。

で、洗剤を投入して、よくかき混ぜましょう。
分量ですが、適当です。

(笑)ではなく、真剣に適当と言っています。

よく、水 〜L に対して洗剤 〜 ml なんて表記がされていますが、とてもめんどくさいです。というより、分かりません。

測る気にもなりませんが、そう書かれていると、
守らなければ何か致命的みたいな気持ちにさせられて、なんだかかなしいです。

なので、楽にいきましょう。
最初は少ないかなと感じるくらいでやってみて、その都度分量を変えていけばいいと思います。

ちなみに、中性洗剤に限らず、洗剤量を増やせば増やすほど洗浄力が上がると思っている方がいますが、変わりません。

変わらないだけならまだしも、量が多ければ多いほど生地を傷めてしまったりもします。

じぶんの心地よいポイントを見つけましょう。

2: 洗う

ここからは科学の話は無くなって、簡単です。
手を動かしましょう。

摩擦に弱いシルクですので、おばあさんが河原でゴシゴシやるようなイメージは捨てましょう。

優しく、漂わすように、軽く動かします。
振り洗いなんて言われたりもします。

そんなイメージで、ふわ〜っと。

上から下に軽く押す、でもいいです。

(目安時間 3分)

3: すすぐ

洗いが十分だと感じたタイミングで、すすぎの工程に移りましょう。

洗った時と同じくぬるま湯で2〜3回すすげば十分です。洗剤が落ちていると感じれば1回でもいいくらいです。

慣れるまでは洗剤量を少なくしておく方法が、
ここでも功を奏しますので、忘れずに。

洗いと同じ動かし方で、優しくふわ〜っとやりましょう。

(目安時間 1〜2分)

4: 脱水

水がびたびたになっている事でしょう。

雑巾のようにぎゅっとやりたくなる気持ちを抑えて、優しくやりましょう。

手のひらサイズ、とまではいかなくとも、なるべくコンパクトに、なるべくしわのつきにくい形に丁寧にたたみましょう。

これを、上から軽く抑えるイメージで水を絞っていきます。何度かやって、ある程度水が出なくなったら大丈夫です。

次に、タオルで包んで水分を取っていきます。
これも上から軽く抑えるイメージで。

ここまでやったら、軽くアイロンをかけましょう。乾かす目的も少しありますが、乾く前に皺を軽く伸ばします。

これをやっておくと、生地に優しいのです。

裏面から、ハンカチやガーゼのようなあて布をして、ドライアイロン (低〜中) で、押しつけずにさっとで大丈夫です。

(目安時間 3分)

5: 干す

ここまでの流れを文字で見ると大変そうですが、やってみたらそうでもありません。

高価で繊細な素材ですので、緊張もして恐い気持ちになるのも分かりますが、書いてある通りに進めていけば大失敗する事はありません。こんなものかと思うはずです。

さて、干すは簡単な作業ですが、とても大事な工程です。

シルクは水に濡れていなくても、吊るしておくと自重でれていってしまいます。

床などに平置きして乾かすのがベストですが、
邪魔です。

解説などで必ず「平置き」と書いてありますが、そんなスペースがないことの方が多いでしょう。

紫外線に弱いので、部屋で干すことには変わりありませんが、椅子の背もたれなどに掛けて干すことをお勧めします。

除湿機やサーキュレーターなどがあれば尚いいですね。

6: アイロン

最終工程です。おめでとうございます。

ここまで頑張って読み進めたあなたに、おめでとうと言いたい気持ちです。

本当の最終肯定は、行動をすることですのでもう一歩なのですが、ここまでは辿り着きました。

4: 脱水 の最後の作業でもアイロンは出てきましたが、ここはガチアイロンです。設定や方法は同じです。

温度設定は低〜中の設定で、裏から当て布をして、押し当てるのではなく優しく掛けていきます。

ポイントは、完全に乾く前にアイロンを掛ける事です。乾ききる前にアイロンをすると、シワが取りやすいです。

何度でも言いますが、ドライアイロンがお勧めです。シルクの場合は特にドライアイロンが良いです。

水に弱いので、スチームをやってしまうと生地のダメージは大きく、ここまでやってきた事が無駄になってしまいます。

ドライがなければ、スチームをオフにした状態のものでも構いません。

まとめ

さて、まとめです。

・桶に洗濯物を入れてもこぼれないラインまで 30°c の湯を張り、中性洗剤を適量入れる →

・ふわ〜っと動かすようにして洗う →

・ 2〜3回、湯ですすぐ →

・丁寧にたたんで抑えるようにして水分を出す →

・タオルで包みさらに水分を取り除く →

・シワを軽く伸ばす程度にアイロンをかける →

・椅子の背もたれなどに掛けて干す →

・完全に乾ききる前にアイロンをかける

・おわり

ずいぶん長い文章でしたが、実はこれだけです。

なんだかできそうですよね。

やってみたら6工程、たいした技術も要りませんし、複雑な作業もありません。普通の手洗いより素材への配慮が増えるくらいのものです。

とはいえ、手間ではあります。

素材の特性を理解しておくことは役に立つので、ある程度は覚えておくことをお勧めしますが、必ずしも手洗いをした方がいいかと言ったらそんな事はありません。

クリーニングに出しても年に1〜2 回程度ですし、お値段も1000円前後が相場ですので、その時の気分でどちらも選択できたらいいですね。

洗濯機をどうしても使いたい場合は、全行程を10分以内に終わるように設定して、中性洗剤を投入してください。脱水はしないで手でやる方がいいのですが、面倒くさいと思ってしまう方は1番短い時間で設定しましょう。

ここまで読んだあなたなら、シルクの基礎知識を覚えているので、どの洗濯方法でもできるようになっているはずです。

無理せず、好きなように、心地よいものを心地よく。参考になったら幸いです。

ではまた。

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