ニットのお手入れ

お手入れ

寒い季節の味方と言ったらニットでしょう。

セーター、カーディガン、それぞれに沢山の色や柄がありさながら冬のTシャツのようです。

着て暖かくて、ファッショナブルで大活躍のニットは、毎日のお供として外せなくなります。

そうして毎日着ていると、気がつくとできている毛玉。

時間のある時にでも取るかなんて思っていたらどんどん増えて、毛玉取りにかける時間もどんどん増えて、だんだんやる気が無くなっていくという経験を私たちはした事がありますね。

それも、一度や二度ではありません。なぜ少量の毛玉時にやらないのか。私も取り忘れ放置経験者として心当たりがあります。

なぜ放置するのか。それは、どうやったら良いのか迷っているからです。

簡単に毛玉を取ると言ってみても、方法は沢山あるし、生地に良い方法で取りたいし、どんな道具を用意したらいいのかも分からない。その他細かいことも含めると意外と考える事が沢山あって、始める前のシンキングタイムからハードルが設置されていたりするものです。

そんなお悩みを解決しようと書いているのがこの記事です。

なぜ毛玉が発生してしまうのか、発生させないためにはどうしてらいいのか、日頃のお手入れはどうするのか。それでも発生してしまったらどの道具でどうやって取るのか。

この記事を読めば全てが分かります。しかも簡単に。

毛玉のメカニズム、取り方や毎日のケア、これらを少しでも知っておけば、お気に入りのニットを長持ちさせる事ができます。保管方法のコツも解説していきますので、シーズンオフになってからも安心です。

古着を扱いはじめて20年経ち、様々な経験をしてきた事に加え、興味と探求のために学んだことをシンプルに分かりやすく手短にまとめていきたいと思いますので、ぜひ最後までお読みくださいませ。

毛玉の原因

はじめに、なぜ毛玉ができるのかが分かれば毛玉を防げるのかという問いに対して、完全に防ぐことはできないという事をお伝えしておきます。

しかしニット製品の特徴を掴む事によって、発生を最小限にする事ができるだけでなく、洋服そのものを綺麗に長く着れる状態を保てる様になります。

簡単に、誰でもすぐにできます。

まずは、どうして毛玉ができるのかを知っていきましょう。

原因は3つあります。

  • 繊維の特性
  • 静電気
  • 摩擦

それぞれ解説していきます。

繊維の特性

まず、「ニット」の種類をおさらいしておきましょう。

私は洋服屋をやっているにも関わらず、洋服のことをあまり知らずに長年やってきました。

私は「ニット」と聞いたらセーターのことだと思っていました。

きっと私の様になんとなく覚えている人も多いのではないかと思います。

それでも支障なんてないのですが、少し知って何がどうなっているのかを理解しているだけで、普段のお手入れに迷いがなくなったりして快適になるはずだと思い、回りくどいながらもおさらいしていこうと思います。

ニットを大雑把に分けると5種類になります。

  • セーター
  • カーディガン
  • Tシャツ
  • 靴下、手袋
  • スウェット

ウール素材ではないものまでニットと呼ぶのか!と叫ばれたあなたの感情は私と同じです。

なぜ「ニット=ウール」というイメージになっているのかはさて置き、今回はセーターのお手入れについてのお話しを進めていきます。

同じニットというくくりの中で、なんだかセーターの毛玉発生率だけエグいなと感じますが、これは繊維の特性に関係しています。

ウールのように柔らかく繊維が短く絡みやすい素材ほど毛玉ができやすく、綿やシルクのように繊維が長くて滑らかなものは毛玉ができにくい。

短いものは毛玉が出来やすく、長いものは毛玉が出来にくい。
どんなニット製品も毛玉はできるけど、ウールとアクリルは毛玉が特に出来やすい。

ニットの主な素材はウールとアクリルで、その他のものは主にコットンです。

ウールは繊維が短く、スケールと言われるうろこ状の構造になっていて、摩擦によって絡まりやすくなります。

ふわふわで、もふもふが推せるウールですが、この弾力性が絡まりやすさの要因となって、毛玉発生ポイントを稼いでしまっています。

ウールの代替として開発されたアクリルも、繊維が短く毛玉が出来やすい素材です。しかもウールより強度が高く、毛玉も固く強くなってしまい取りにくいです。

フリースもアクリルで作られている事が多く、同じ事が言えます。更に悪いことに、フリースが潰れてしまったという経験をした人は少なくないと思います。その現象も、繊維の短さと強度のせいだと言えます。

豆知識ですが、潰れてしまったフリースに、100均で手に入る犬猫用のブラシをかけて戻せる場合もあります。諦める前に一手間かけてみてもいいかもしれません。

素材をさらに傷つけることもありますので、ゆっくり丁寧に試してみてください。

話がそれました。

先ほどから繊維の「短さ」がよくないと言ってきましたが、じゃあ「長い」ものであればできにくいって事?と思っていたあなたは鋭いです。その通り、できにくくなります。

高品質なウールで最近よく耳にすることも増えてきたメリノウールは、繊維が長く、毛玉が出来にくい素材です。同じくカシミヤも繊維が長く、ウールに比べると毛玉の出来にくい素材です。

以上、大雑把にはなりますがウールという繊維の特徴になります。

静電気

人類の大敵と言っても過言ではないのが静電気でしょう。

冬の時期、扉などの金属部分を積極的に触りにいく人を私は見た事がありません。

そんな静電気は洋服にとっても大敵である、とお伝えしたい。

静電気がよくないという話にも関わらず不思議に感じるかもしれませんが、ウールは静電気を帯びにくい素材で、これも毛玉発生ポイントをアップさせています。

ポリエステルなどの静電気の帯びやすい素材は、静電気によって繊維の動きを抑える事がある様ですが、逆にウールは静電気ボーナスがないために繊維が動き、摩擦によって毛玉が出来やすくなる場合もあるそうです。

この矛盾は洋服の組み合わせと摩擦が関係して、結局静電気は敵という結論になりますので、良い奴とは思わないでください。

私からしたら「バチっ」ときにくいウールの特性を支持したい気持ちでいっぱいです。

静電気が発生すると繊維同士が引き寄せられて絡まりやすくなる為、毛玉が出来やすくなる。

パチパチ音がしたら静電気が発生していて、洋服同士がまとわりついていたら静電気によって絡まっているという事です。

静電気を防ぐ効果的な方法は繊維の組み合わせが最も重要ですが、柔軟剤を使うことで繊維の表面をコーティングされて静電気の発生を抑える事ができます。

また、着用前に静電気防止スプレーを使うのも効果的だと言われています。

余談ですが、静電気を抑えるゴムのリング、その他器具など複数試した事がありますが、効果を確認できませんでした。個人の感想として、と付け足しておきましょう。

静電気が悪い!という事がお分かりいただけたところで、静電気と関係の深い摩擦の話に移っていきましょう。

摩擦

毛玉発生最大の原因が、摩擦です。

「繊維の特性」と「静電気」のくだりでも摩擦という言葉がでてきていました。

この事からも摩擦の要因の強さがうかがい知れることかと思います。

なぜ摩擦が毛玉を作るのか、それはこすれるからに決まっています。

しかし、毛玉発生のメカニズムを知る事が非常に大切な事なのです。

着用時と洗濯時にもっとも摩擦が発生します。

生地が擦れて摩擦が発生すると、毛羽立ってきます。着用や洗濯などを重ねる事によって毛羽立ちが蓄積していきます。この毛羽立ちが進化したものが、毛玉です。

特に、着用して湿気を吸って柔らかくなったウールは、毛玉発生プロセスを加速させてしまいます。

じゃあ、もう、やれる事がないからそのままほっとくしかないのかと思ったあなた、大丈夫です。

簡単かつ確実な方法で毛玉の発生を抑えつつ、ニットを綺麗に長持ちさせるやり方をお伝えします。

毛玉の抑え方と日常のケア

着用したセーターを家に帰って脱ぎ捨てて、そのまま放置する人は多いでしょう。

ほとんどの人がそのまま放置すると言ってもいいほどでしょう。私もそうでした。

でも、毛羽立ちを抑えたいのならひと手間を惜しんではいけません。帰ってきた直後のセーターには、ブラッシングです。髪をかすくらいの簡単な感じで、すっとブラシを下ろすだけでOKです。

おすすめは、RedeckerレデッカーKentケント という2つのブランドです。

摩擦で毛羽立とうとしている繊維を、撫でて落ち着かせてあげる。ただこれだけで良いのです。

そして、最も大切な日常のケアが「休ませる」という事です。

休ませる、と言われてもピンとこないと思いますが、言葉の通り休ませます。

毎日着用したくなるお気に入りもあるかと思いますが、一旦落ち着かせるのが重要です。

毛羽立ちを抑えるためにブラシをするのと同じ様に、というか、そこに休ませることを加えると効果が上がります。ウール繊維は弾力性があり、時間をおくと元の状態に戻る特性があります。正確にいうと戻りはしないのですが、元に近づくという様な感じです。

ブラシをして毛を整えて、時間をおいて戻していく。1日休ませるだけも効果はありますが、3日程度休ませると尚のこと良いようです。

休ませるのには他にも意味があります。ニットというのは吸湿性の高い繊維で、それによって保温効果を高めるというメリットがあるものの、ウールは水に弱く繊維を傷める原因になります。

着用して湿気を伴うと繊維が柔らかくなり、潰れやすくなったり摩擦の影響を強く受けたりします。

高級なニット製品のカードにも休ませる事が推奨されていますが、残念ながら小さなスペースでなぜ休ませるのかまでは説明しきれません。

ブラシをしたり休ませたりする事が繊維に良いのだと知って、お気に入りのセーターを長持ちさせるための少しの手間が心地よい時間になるきっかけになったら嬉しいです。

ウールの洗濯

毛玉のできる原因と、日常のお手入れについて理解が深まったところで気になるのは洗濯です。

そもそも洗って良いの?というところから迷ってしまうのがウール。

洗ったら縮んでしまったという事もよく聞きます。

でも、これも少し知っているだけでずっと使える知識となりますので、是非覚えていただきたいです。

  • 裏返して洗濯ネットに入れる。
  • 柔軟剤を使う。
  • 手洗い
  • 洗濯機を使いたい場合は10分以内で終わるように設定

たったのこれだけです。間違いがない様に、少し解説していきます。

洗濯の仕方

前提として、一度着たら洗濯するというのは過剰です。

直接肌に触れる事も少なく、汗をたくさん掻く季節でもないので、ワンシーズンで数回洗う程度で大丈夫です。

まずは、洗濯表記を確認してみましょう。

おそらく、ドライクリーニング以外バツがついているかと思います。これは必ずドライでという意味ではなく、ドライがお勧めだよという場合もあります。

判断するのはとても難しいですが、毛の長いもの(肌触りのソフトなもの)以外は洗っても大丈夫だ、と経験上感じますが、それぞれの判断にお任せすることになります。

ずっと使える技術なのでぜひ挑戦してみてほしいと思います。

簡単に解説していきます。

洗濯機を使いたい場合、裏返してネットに入れるのが重要です。

これは摩擦で生地が傷むのを防ぐためです。この一手間だけでかなりの効果ですので、絶対にやったほうがいい一手間です。

ウールは水に弱いので、濡れている時間を短くしなければいけません。10分で脱水までの行程を終えれば問題ありません。干す時は平置きでやれたら良いですが、中々スペースが無いかと思います。

ハンガーを2本使って重さを分散させたりしてあげて、伸びるのを最小限にしてあげましょう。

どの方法にしても洗濯が終わったら、生地を伸ばすようなイメージで整えてあげましょう。シワを伸ばすという感じで形を整えて干すと、伸縮率も更に下がります。

洗濯する際、柔軟剤は静電気防止になりますので、おすすめです。においが苦手な方は無香料のものもありますので、試してみてください。

手洗いの場合も行程は同じです。

シルクのお手入れと同じイメージですので、気になる方は合わせてご覧ください。

とても簡単に洗濯ができますし、コスパも良く、年に何度もすることでもありませんし、綺麗な状態を手軽に作れればカビも防げますので、悪い事がありません。

もちろんクリーニングに出すという選択肢もありますので、それぞれの状況で試してもらえたらと思います。

収納方法

シーズンが終わり、洗濯までしっかり出来たのに保管状態が悪かったら、手間をかけた意味がなくなってしまいます。ここでは着ている時間よりも長い、保管のベストを考えていきましょう。

これも今からすぐにできる方法で、効果的です。先ほどからこのセリフばかりですが、悪くなる原因を知っているというだけで誰にでも同じ効果が出るということです。

ニット保管環境のベストを簡単に言うと、湿度40〜60%で直射日光を避けた風通しの良い場所です。

ベスト環境を維持できた時、カビの発生を防ぐと共に臭いをも防ぎ、虫の発生を抑えた上に繊維の劣化まで防ぐ超絶ボーナスを得ることになります。マスターしましょう。

よく聞く「風通しの良い場所」という表現に対して「外かよ」とツッコミを入れたのは私だけではないはずです。これの本当の意味は、湿気や空気のこもりを防ぎ通気性を確保することです。風ビュンビュンではないのです。

やる事は2つです。

押し入れやクローゼット等の収納スペースにすのこを敷いて除湿剤を置く、これだけです。

これだけではありますが、コツがあるのでお伝えします。

最近の家のデザインだと、ハンガーにかけるスペースと収納ボックスなどのスペースがあるパターンがほとんどでしょう。何段か重ねる事ができる物の場合、上の方からレザー→シルク→ウール→コットン・リネン→化繊と入れていきましょう。

カビは下から上に向かっていく性質があります。これだけでも効果的ですが、すのこまで敷いてあれば更に強化されます。ハンガーでかける場合、扉の入り口に近いところにレザー→と掛けていきましょう。

ボックスも、掛けも、言うまでもありませんがギュウギュウに詰めてはいけません。7割くらいが理想です。そして、たまに開けてあげましょう。どんなに工夫しても、やっぱり閉めっぱなしは良くないです。

毛玉の取り方

ここまで毛玉の発生を抑えるための日常のケアをお伝えしてきました。

日頃の手入れをしていれば長く綺麗に着れますので、ぜひ実践してみてください。

それでもやっぱりどうしても、毛玉はできてしまうものです。

ここでは毛玉ができた時の処理の仕方をお伝えしていきます。面倒くさいと感じてしまうのは、方法や使用する道具がたくさんあって迷いが出てしまうからだと思います。

それをぎゅっとまとめて一つの方法だけをお勧めします。

ずばり、毛玉取り機です。

毛玉取り機で簡単に、楽して安全にやっていきましょう。

なぜ機械が良いか

そもそも設計の段階で生地を切りにくくされているので、安心・安全です。

さらに、早いです。どんどん取れます。取れている時の感覚も気持ちがいいです。

安心・安全で早いので、使い慣れていない方でも簡単です。

デメリットとしては、厚手のニットやアンゴラ・カシミヤ・モヘア等の薄手のものとフリースは、毛玉取り機での処理に向いていません。

とは言うもの、取れないというわけではありません。生地を切りやすかったり、傷めてしまったりしやすい事があるので注意が必要という感じです。

私のお勧めの毛玉取り機はこちらです。

なにはともあれ、じぶんに合ったアイテムが良いと思いますので、色々試してみてくださいね。

まとめ

ここまで読んできたあなたはもうニットお手入れバッチリの人です。
改めておさらいしていきましょう。

毛玉ができる原因は、繊維の特性・静電気・摩擦でした。

それを理解した上で毛玉を出来にくくするためには日頃のケアが大切で、着用後は休ませる・洗濯時の一手間・保管方法に気をつける事が大切でしたね。

しかしそれでも毛玉はできてしまうもの。万が一できてしまった場合は、できるだけ早い段階で毛玉取り機を使って処理していきます。

長々と書いてきましたが、ほんとにこれだけのことです。でも、なんだか分からなくてどうしたらいいか迷っていた時に比べ、今はきっと前のめりに毛玉を取りにいけるはずです。

少しウールという繊維のことを知れば、着る時もメンテナンスも保管も、全てが気持ち良くなりますし、洋服を長く着る事ができるようになります。

参考になりましたら幸いです。ぜひご活用してくださいね。

ではまた。

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